交通事故死の約4倍!? 若者でも危ないヒートショック

冬に急増する脳卒中は三大疾病のひとつ

いまや国民病ともいわれている三大疾病。ここでいう3つとはがん(悪性新生物)・急性心筋梗塞・脳卒中のことをいう。いずれも早期発見であれば一命をとりとめることもできるが、できれば体験したくない疾患といえるだろう。なかでも脳卒中は寒くなったこの時期に急増する疾患で、血圧と密接な関係があることをご存知だろうか。

老齢の方が引き起こすイメージのある脳卒中。加齢とともに血管も脆くなることからも、あながち間違っているとはいえないのだろうが、血圧という人の命とは切っても切り離せないことから考えると、たとえ若くとも決して油断してはいけないことといえるのだ。

ところで脳卒中にはいくつかの種類があるのだが、大きく分けるとふたつに分類される。脳の血管が詰まることで発症する脳梗塞、脳内で出血する脳出血やくも膜下出血がそれだ。そして日本におけるその数は約150万人ともいわれており、毎年25万人もの方が新たに発症しているという。

日本人の死因は三大疾病が上位を独占しているが、脳卒中は第3位。高齢者社会における高齢者の増加、そして脳卒中の要因となる糖尿病や高脂血症などの生活習慣病疾患者が増えることで、2020年には脳卒中の患者は300万人を突破するともいわれている。また、寝たきりになる原因の約3割は脳卒中などの脳血管疾患によるものなのだ。

寝たきりになる原因(平成13年国民生活基礎調査、脳梗塞ネットをもとに作図)

とはいえ、自分はまだまだ若いから大丈夫! と思っている方も多いのではないだろうか。たしかに若ければ、体力も気力も充実し、ましてや血管の老化など考えられまい。ところが年齢に関係なく、この脳卒中の急増する時期が冬なのだ。そして、その引き金となるのが、ここ数年世間を賑わせている「ヒートショック」にほかならない。

すでにご存知かとも思うが、「ヒートショック」について改めて説明しよう。冬場というのは、外気温が著しく下がることで室内との温度差が激しくなる。人は寒くなれば、エアコンやファンヒーターなどで室温を快適に保とうとする。外出時には24℃前後に保たれた快適な環境から、場所によっては氷点下というような寒い外気に触れることになる。また、その逆も然りで、外出から戻れば、寒い場所からあたたかい快適な空間へと変化することになる。このとき、気温というのは大きく変化している。人体はこれを敏感に察知し、血管が収縮したり拡張したりするのだ。その結果、血圧に大きな変動がみられることになる。この大きな変動による健康被害を「ヒートショック」と呼ぶ。



外出時や帰宅時は決して安心ではないが、それでもまだコートやマフラーを着用しているので未然に「ヒートショック」を防いでいるともいえる。もっとも危険なのは、もっとも身近な場所に潜んでいることを見逃していることだ。そして、その場所とは人が生活するうえで、切り離すことができないところでもあるのだ。その場所というのは浴室とトイレ、そして寝室だ。

入浴時など、急激に室温の下がった場所で服を脱ぐと「ヒートショック」を引き起こしやすい。

就寝時に暖房をつけたままにするのは北海道のような寒冷地は別として、全国的にみればたいてい電源を落としている。近年では外断熱工法など、住宅を建てるときの工法にも工夫が施されるようになり、寒い寝室からの脱却も実現されているケースもある。しかし、一般的な室温は約10℃前後であり、布団のなかが30~33℃ということを考えれば、その差はなんと20℃以上もあることになる。寝てからトイレに行きたくなり、目覚めたという経験は誰にでもあるだろう。あたたかい布団のなかから出たとき、ブルっと身震いするのはそのためだ。

トイレに入ってからも、同じようなことが引き起こされている。下着をおろして用を足すときに、人肌は外気に直接触れることになる。パジャマで包まれているだけでも保温効果はあるのだが、それを脱ぐことでこれが損なわれてしまう。それだけでも危険な状態なのだが、ここに力をいれていきむことになる。その結果、血圧の上昇をプッシュすることになってしまうのだ。

また、入浴前に服を脱ぐ脱衣所も同じだ。たいていの住宅では、この脱衣所に暖房はないだろう。あたたかいリビングから寒い脱衣所で裸になることからも、ここに「ヒートショック」の危険が潜んでいることがわかるはずだ。

これだけ身近で日常的な場所が、冬場には危険となりながらも大多数の人はこの対策をしていないのが現状だろう。「ヒートショック」によって突然襲い掛かる脳卒中の危機。これを未然に防ぐためには、どうすればいいのだろうか。

「ヒートショック」を防ぐ方法とは

「ヒートショック」を引き起こさないためには、室温の差を減らすことに限るだろう。ちょっと工夫をすれば、環境が改善されて、予防手段となることを知っておきたい。たとえば浴室を例にしてみよう。裸になって入った浴室というのは、当然あたたかいはずはない。これをまず、改善する必要がある。

  • 裸になって入る前に浴槽の蓋をとり、浴室内に湯気を充満させておく
  • 浴槽に入る前に、心臓より遠いところからかけ湯をする
  • バスタオルで水滴をふいてから、浴室から出る

日頃からこうしたことを心がければ、それだけでも予防することは可能なのだ。これに加えて、脱衣所とリビングの室温の差も減らすようにできればさらにいいだろう。ただしエアコンを取り付けるというような大掛かりなことをすれば、費用もそれなりにかかってしまう。ただ、今は人体センサーを搭載した小型のセラミックヒーターが数千円から1万円程度で売られている。

センサー付きであれば無駄な電力消費にはならず、また小型なので場所もとらない。作動して少し待つだけで、脱衣所やトイレの温度は上昇し始める。日頃の工夫に小さな家電を加えることで、「ヒートショック」の危険をぜひとも回避したいものだ。

小さくても暖房器具の導入で「ヒートショック」予防を心がけたい。人体センサー付きなら節電にもなるので経済的だ。

最近では「ヒートショック」の危険度を知らせてくれる「ヒートショック予報」といったサイトもある。こうしたサイトで自分の住んでいる地域を確認し、気をつけることも実践していきたいものだ。

寒さなんて大丈夫! というやせ我慢が、脳卒中を引き起こして寝たきりや最悪死亡事故につながってからでは遅い。冬は今、始まったばかり。これから何十年も続く人生を謳歌するためにも、健康には普段から気をつかっていきたい。